キャッチボール~亀梨和也~「和也ぁ~。行っくよ~!」 満面の笑みを浮かべて力いっぱいボールを投げた。 私の手から離れたボールは、綺麗な放物線を描いて、和也の元へと飛んでいった。 キャッチボール 何となく、思いついた。 和也と、キャッチボールがしたい、って。 何となく、告げてみた。 和也と、キャッチボールがしたい、って。 長かった地方でのお仕事を終えて帰って来た彼は、本当に久しぶりのオフなのに、 私なんかを家に呼んでくれた。 「疲れてるでしょ?ゆっくり休みなよ」 そう言ってみたけど、和也は聞かず、駄々をこねた。 「俺はお前に会いたいの!」 知ってるくせに。あたしがその声に弱いこと。 そんな武器使って、お姉さんを、どこまで虜にするんだか。 2ヶ月ぶりに入る和也の部屋。 ベッドの横には、服やらなんやらが飛び出した大きなキャリーケース。 大きなお仕事の残骸。 「お帰りなさい」 そう言うと和也は、口角を上げて、少し首を左に傾けて、両肩を上げ、外国人みたいなジェスチャーをする。 そんな和也にふふって笑ったけど、少しやつれた彼の頬に目がいった。 「和也、また痩せたことない?」 「ん?ちょっとね。そういうお前は、ちょっと太ったことない?」 和也が悪戯っぽく言う。 「どの口が言うの~~~~っ!!」 頬を膨らませたあたしは、和也のほっぺを両手の指でつまみ、横に引っ張った。 和也は、「痛い、痛い」って言いながらも、嬉しそうだった。 あたしもまた、頬を膨らませながらも、この時間が嬉しかった。 和也のほっぺから指を離し、二人でケラケラ笑っていると、 和也が言った。 「誕生日、おめでと。随分、遅くなったけど」 もう。急に真面目な顔するんだから。 「ありがと」 にこって笑うと、また和也が口を開く。 「お前さ、何か、したいことない?」 「まぁた、君は唐突なことを」 そう言って苦笑い。 「何でもいいよ。何でも、叶えてやる。何かないの?」 ちょこっと、う~んって唸ってみて、何となく、浮かんだ事を言葉にしてみた。 「・・・和也と。和也と、キャッチボールがしたい」 「はぁっ?!」 意外だったのか、素っ頓狂な声を上げた和也。 「キャッチボール」 ってもう1回言うと、和也はすくっと立って、部屋を出て行った。 えっ??怒らせちゃったのかな?? 和也の気に障っちゃったのかな?? 気分屋の和也のことだから。 軽~くパニック。 すると、部屋の外から、和也の声がした。 「裕也~!お前のグローブ、貸して~!」 思わず、吹き出した。 和也、可愛い。 思わず、ニンマリ。 部屋に戻ってきた和也は、かわゆい弟君から借りてきたグローブを笑顔であたしに投げて、 「行くぞ」 って一言。 家を出て、公園に向かう。 和也の右の手にはグローブ。右のポケットにはボールが1つ。 あたしの左の手には、グローブ。 右の手の中にあるのは、和也の左の手。 ちょっと小指が短くてブサイクな、だけど、大好きな、和也の手。 舞台で体を支えて、小さな傷の跡が絶えない、大好きな、和也の手。 「行くよ」 和也の手から離れたボールは、緩やかな放物線を描く。 野球の腕前はプロ並・・・ちょっと言い過ぎだけど、まぁ、そこいらの19歳よりは飛び抜けてるからいっか。 プロ並の和也は、初心者のあたしに合わせて、のんびり投げてくれる。 優しいなぁ・・・って幸せ噛み締める。 何度かボールが2人の間を行き来して。 慣れてきた頃に、ふと思いつく。 あたしが目指す先は、和也よりも、もっともっと向こう。 どれだけ遠くまで飛んでくかなぁって。 あたしの中の悪戯心が疼く。 「和也ぁ~。行っくよ~!」 満面の笑みを浮かべて力いっぱいボールを投げた。 その瞬間、ボールを目で追う和也が笑って言った。 「取れるわけないじゃん!」 私の手から離れたボールは、綺麗な放物線を描いて、和也の方へと飛んでいった。 しかし、思いの外、飛距離が伸びない。 あたしの予想では、和也の頭を超えて、和也が走って転がるボールを拾いに行って・・・。だったのに。 和也は、ふわっとジャンプして、その左手を伸ばし、ボールをキャッチした。 「・・・取れないと思った」 ってビックリしたあたしに。 「お前の投げた想いは、全部受け止めてやるよ!」 って嬉しそうに叫んだ和也。 「酔ってんの~?」 笑って誤魔化したけど、 あたしの胸が、熱くなってくのを感じた。 ボールが行き交う間、たいして言葉は交わしてない。 だけど、その行き交うボールが、2人の気持ちを運んでて。 今まで、会えなかった分の時間をボールが行き交う毎に埋めていって。 ボールを投げる度に、和也への愛は大きくなっていって。 ボールをキャッチする度に、和也からの愛は膨らんでいって。 何となく、告げてみて良かったなって思った。 和也と、キャッチボールがしたい、って。 はしゃぐ子供の声と、 微かな草の匂いと、 優しい陽だまりと、 和也の大きな愛に包まれた、日曜の昼下がり。 THE END お友達の御誕生日祝いに書いたお話♪ 和也さんと、キャッチボールしたいですよね(*^-^*) 個人的ツボは、裕也の登場(笑) 弟君溺愛の和也ならでは(爆) 元々は、BUMP OF CHICKENの「キャッチボール」をイメージしました。 ただ、藤君の世界観を壊したくなかったので、 風景の描写などはずらしましたが・・・。 藤君の詞と、比べないで下さいね(^^; そんないいもんじゃないんで(汗) 良かったら感想聞かせてください~~☆ リクもお待ちしております!! コチラ へどうぞ☆ ジャンル別一覧
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